今回のコラムでは、障害福祉サービスのうち、「就労移行支援」というサービスについて解説していきます。
サービスの内容や対象者、利用方法等について詳しくご説明していきますので、ぜひ最後までお読みいただければと思います。
前回は「自立訓練」について解説しておりますので、こちらもあわせてご覧ください。
就労移行支援ってどんなサービス?
就労移行支援とは、障害のある方を対象に、「企業への就職」に必要な知識やスキル向上のためのサポートを行うサービスです。
就労移行支援事業所では、「企業への就職」のための様々なプログラムを提供しています。就職活動のサポートだけでなく、ビジネスマナーなどの社会人として必要な知識・スキルを身につけるためのプログラムもあります。まさに「企業への就職」を目指して支援を受けたい方に向けたサービスと言えます。
就労移行支援の概要
・対象者は?
―就労移行支援の対象者は、「一般企業への就職を希望する」障がい者ということになります。具体的には、就職したいと思っているのだけれども一人では難しいため、就労に必要な支援が必要だという方です。事業所としては、「訓練等により就職の見込みがある方」を対象に支援を行います。まとめると、次のようになります。
①通常の事業所に雇用される(一般企業に就職する)ことが可能と見込まれる方。
②通常の事業所へ雇用される(一般企業に就職する)ことを希望し、その為の支援を受けることを望む方。
・利用期間は?
―原則として2年間が利用期間となります。個別の判断により、延長される場合もあります。このように期限があることで、その期間に集中して就職活動に取り組むことができます。期間に定めのあるサービスとなりますので、最低でも3か月に一度支援計画を見直し、こまめに方向性を確認しながら支援を提供していきます。
・利用料金
―障害福祉サービスの自己負担は、所得に応じて負担上限月額が設定され、ひと月に利用したサービス量にかかわらず、それ以上の負担は生じません。利用者が18歳以上の場合は、障がいのある本人とその配偶者の収入により、負担上限が決まります。※詳しくは、お住まいの市区町村へご確認ください。
・サービス内容
①就職に向けた訓練
就職に必要な訓練を行います。ビジネスマナーや職場でのコミュニケーションの他、PC訓練や軽作業の訓練等があります。
また、それぞれに合った職種や仕事内容を考えるために、実際の働く現場に「見学」や「実習」にも行きます。
②就職活動のサポート
就職活動のサポートを行います。履歴書を一緒に作ったり、面接の練習をしたりします。また、実際の就職活動にも同行することもあります。
③職場定着支援
入社後も仕事に関する相談にのります。また、場合によっては企業へ環境調整の依頼を行いこともあります。※入社半年経過後も定着支援を希望される場合は、「就労定着支援」事業を利用することで、支援を継続して受けることができます。
就労移行支援のトレンド
このように、就労移行支援事業所では、企業への就職を目指して様々な支援を行っています。前回解説した「自立訓練」は、「自立」という言葉の幅が広いので、その解釈によって事業所ごとにサービス内容に幅が出ますよ、という話をしましたが、就労移行支援の場合は、「企業への就職」という明確な目的が設定されていますので、そのために必要な支援、支援内容はどこも似たものになりがちという側面があります。
ところが最近は、「特化型」の就労移行支援事業所が増えてきています。例えば、「IT関係の就職に特化した訓練と支援を行っています」といったように、職種に特化して訓練や支援を提供する事業所が出てきています。また、「発達障がいの方専門」「リワーク(復職)の方専門」のように、利用者の属性を絞って、よりニーズに合った事業所もあります。自身の希望や困りごとに応じて事業所を選ぶ、というのが今のトレンドと言えるでしょう。
就労移行支援事業所を探す際は、自分の特性やニーズにあった事業所かどうかを意識して探してみてください。特に、その事業所にどういった利用者の方がいるのかは要チェックです。精神障害をお持ちの方と知的障害をお持ちの方、あるいは若い方なのか壮年の方なのか、対象によってプログラム内容は大きく変わってきます。事業所のホームページには「どのような方でも受け入れ可」と書いてあることもありますが、実際はある程度対象者が決まっていることがほとんどです。一度見学に行き、事業所の雰囲気を見てから利用を検討されるのが良いでしょう。
学び場パレットの就労移行支援
さて、学び場パレットも就労移行支援を提供する事業所です。コラムの最後に、就労移行支援としてのパレットの特長をご紹介したいと思います。
パレットは、高校等を卒業した後、すぐに就職や職業訓練に行くのではなく、10代~20代の今しかできない豊かな経験(勉強以外にも、友人との交流や趣味活動、将来に向けた自己分析、葛藤など、つまるところ「青春」です)をつむことに価値を置いた事業所です。こうした経験を通して、自分の生き方についてじっくりと考え、自分に合った働き方や仕事内容を自分で選んでいくことを目指します。
パレットは、その4年間の課程のうち、前半2年間を「自立訓練」、後半2年間を「就労移行」の事業をもって運営しています。後半の2年間、つまり就労移行支援の2年間は、自分が社会人として活躍できる場所を探す2年間です。仕事を探すことは、自分が「どのように生きたいか」を考えることです。そのためパレットでは、特定の職種や働き方にこだわらずに幅広く見て聞いて考える取り組みを大切に支援を行っていきます。
パレットのように、自立訓練と就労移行支援を活用し、10代~20代の青年たちに学びの機会を提供しようという事業所は増えています。こうした事業所は、「学びの場事業所」と呼ばれます。自立訓練(生活訓練)だけの2年間、あるいは就労移行支援もあわせた4年間等、様々な運営形態の事業所がありますので、ご興味のある方は一度調べてみてください。
学びの場事業所についてのコラムはこちら。
今回は以上です。次回はもう一歩踏み込んで、障がいのある方の働き方について解説しようと思います。お楽しみに!