今回からのコラムでは、障害福祉サービスのうち、「自立訓練(生活訓練)」というサービスについて解説していきます。
サービスの内容や対象者、利用方法等について詳しくご説明していきますので、ぜひ最後までお読みいただければと思います。
自立訓練ってどんなサービス?
自立訓練とは、障がいのある方が、自立した日常生活を送るために必要な訓練を行うサービスです。
自立訓練は、その訓練の方法によって「生活訓練」と「機能訓練」の2種類のサービスに分けられます。
「生活訓練」:生活能力を維持・向上するための訓練を行う
「機能訓練」:身体機能を維持・向上するための訓練を行う
生活訓練の事業所は、「生活能力の向上」ということで、社会生活力やコミュニケーション力を高めるような訓練を実施しているところが多いです。一方機能訓練の事業所では、身体のリハビリテーションが訓練の中心になっています。一言に「自立訓練」といっても、2種類の事業所があります。自立訓練の事業所を探す際は、その事業所が自身のニーズに合った種類の自立訓練を提供する事業所かどうかを確認するようにしてください。
以下、本コラムでは、「生活訓練」の事業所について解説していきます。
自立ってなんだ?
ところで、「自立した日常生活を送るために必要な訓練」でいう「自立」ってどういう状態なのでしょうか?
皆さんは「自立」というとどのような状態を思い浮かべますか?
一人で暮らすことでしょうか?家事ができること?働いて十分な収入を得ること?自己決定ができること?
生活リズムを維持できること?人とうまく話せること?…
一言に「自立」と言っても、その言葉の指す範囲がとても広いことが分かると思います。その人の置かれた様々な状況や環境によって、目指す「自立」の内容は異なっています。
自立訓練は、こうした様々な形の、それぞれが目指す「自立」を支援するための事業です。ですので、先の例でいうと、生活リズムを整える為に利用する人もいれば、コミュニケーションスキルを高めるために利用する人もいます。家事や買い物の練習をするために利用する人もいます。目的に応じて柔軟に活用できる事業だからこそ、しっかりと目的をもって利用することが大事だと言えるでしょう。
事業所は、それぞれに「自立」を定義し、「自立」に向けた様々なサービスを提供しています。事業の目的がカッチリと決まっているサービス(就労系の事業所等)に比べて、事業所ごとに理念やサービス内容に違いが出やすいですので、色々な事業所を調べて比べてみるのも面白いかもしれませんね。
尚、「自立」というと「就労」が浮かぶ人も多いかもしれません。仕事をして収入を得る=自立、というのはもっともなことです。障がいのある人が就労を目指す場合、就職支援に特化したサービス「就労移行支援」がありますので、自立の手段として「就労」を目指す場合は、こちらの方が適当でしょう。自立訓練は、就労に限らない主に「生活」面の自立を目指す人に適した事業ということになると思います。
自立訓練(生活訓練)の概要
・対象者は?
ー自立訓練(生活訓練)の対象者は、「自立した日常生活を送るために必要な訓練」が必要な障がい者ということになります。具体的には、特別支援学校等を卒業した後、自立に向けてさらなる教育や訓練の機会が必要と考える人や、施設や病院を退所後、一人での生活に不安のある人等が利用することが多いイメージです。
・利用期間は?
ー原則として2年間が利用期間となります。個別の判断により、3年間とされる場合もあります。期間に定めのあるサービスとなりますので、最低でも3か月に一度支援計画を見直し、それぞれに合った効果的なサービスを提供していきます。
・事業所の種類は?
ー自立訓練(生活訓練)には、3種類の事業所があります。
①通所型
自宅から事業所に通所し、訓練を受けます。最もポピュラーな形です。
②訪問型
支援員が自宅へ訪問し、支援を提供するものです。自宅から出ることが難しい方に向いています。
③宿泊型
住み込みで訓練を受けるイメージの事業所です。家事等の生活動作を実際に体験して身につけます。
・利用料金
障害福祉サービスの自己負担は、所得に応じて負担上限月額が設定され、ひと月に利用したサービス量にかかわらず、それ以上の負担は生じません。利用者が18歳以上の場合は、障がいのある本人とその配偶者の収入により、負担上限が決まります。※詳しくは、お住まいの市区町村へご確認ください。
・サービス内容
事業所によって異なりますので、自分に合った事業所を探すのがよいでしょう。以下に、一般的なプログラム内容の例を挙げてみます。
身辺自立、家事スキル向上
食事、排せつ、入浴、洗たく、料理、そうじ、健康管理、生活リズム、金銭管理、余暇管理等の自立に向けた支援
社会生活スキルの向上
社会生活上のマナーやルール、コミュニケーションスキル等を身につけるための支援
地域生活移行
住まいの確保のための支援、就労支援機関の紹介
学び場パレットの自立訓練(生活訓練)
さて、学び場パレットも自立訓練(生活訓練)の事業所です。コラムの最後に、自立訓練(生活訓練)としてのパレットの特長をご紹介したいと思います。
パレットは、高校等を卒業した後、すぐに就職や職業訓練に行くのではなく、10代~20代の今しかできない豊かな経験(勉強以外にも、友人との交流や趣味活動、将来に向けた自己分析、葛藤など、つまるところ「青春」です)をつむことに価値を置いた事業所です。
パレットは、その4年間の課程のうち、前半2年間を「自立訓練」、後半2年間を「就労移行」の事業をもって運営しています。自立訓練の2年間は、社会人としての自立にための「土台づくり」の2年間です。仕事にこだわらず、同世代のクラスメイトとの交流を通してコミュニケーションを学ぶこと、自分たちの生きる社会に何があり、どんな人がいるのかを見て聞いて学ぶこと等に取り組みます。
パレットのように、自立訓練という懐の広い事業を活用し、10代の青年たちに学びの機会を提供しようという事業所は増えています。こうした事業所は、「学びの場事業所」と呼ばれます。自立訓練(生活訓練)だけの2年間、あるいは就労移行支援もあわせた4年間等、様々な運営形態の事業所がありますので、ご興味のある方は一度調べてみてください。
学びの場事業所についてのコラムはこちら。
今回は以上です。次回は就労移行支援事業所について解説します。
お楽しみに!