障害者の生活を支えるためのサービス
今回のコラムでは、障害をもつ人を支える障害福祉サービスについて解説していきます。生活上必要な介護の支援を提供するものから、日中活動の場を提供するもの、就労を含む社会参加に向けた支援を行うものまで、様々な種類のサービスがあります。自分に合ったサービス探しの一助となれば幸いです。
さて、障害福祉サービスとは、障害者への支援サービス等について定めた「障害者総合支援法」に基づいて提供されるサービスのことです。同法では、17種類のサービスが規定されています。それぞれを具体的に見ていく前に、同法が定める障害福祉サービスの対象者について確認しておきましょう。
①18歳以上の障害者
・身体障害者
・知的障害者
・精神障害者(発達障害者も含まれます)
②満18歳に満たない、身体・知的・精神に障害のある児童。発達障害児も含まれます。
③難病患者(障害者総合支援法により定められたもの)。病気の程度により、日常生活に相当の困難が生じると認められる場合、サービスの対象となります。
ちなみに、児童に対するサービスについては、「児童福祉法」が定めるものも存在しています。訪問系サービス(居宅介護や移動支援等)については障害者総合支援法が、通所系サービス(放課後等デイサービスや児童発達支援等)・入所サービスについては児童福祉法が規定しているというイメージになります。
ですので、今回紹介する障害福祉サービスはすべて「障害者総合支援法」に基づくサービスですので、基本的に18歳以上の成人を対象にしたものであるとご認識ください。児童を対象としたサービスについては、別の機会にまとめてご紹介できたらと思います。
障害福祉サービスの種類と役割
さて、では17種類の障害福祉サービスについて紹介していきましょう。障害福祉サービスは、社会生活を営むために必要な訓練等の支援を提供する「訓練等給付」と、日常生活に必要な介護の支援を提供する「介護給付」の二種類に大別されます。厚生労働省のHPに掲載されている図表が分かりやすいと思いますので、以下に転載します。
出典:厚生労働省ホームページ(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/service/naiyou.html)
介護給付から、それぞれのサービス内容について概説します。身体的な介護・介助がサービスに中心となります。
①居宅介護
居宅(自宅)において、入浴、排せつ及び食事等の介護、家事並びに生活等に関する相談及び助言その他の生活全般にわたる援助を行います。所謂ホームヘルプサービスです。
②重度訪問介護
重度の障害者に対する生活全般の援助を行うサービスです。外出中の介護もサービスに含まれます。また、病院等に入院又は入所している障害者もサービスの対象となります。
③同行援護
視覚障害者等の外出支援を行うサービスです。外出に同行し、移動に必要な情報を提供するとともに、移動の援護及びその他必要な援助を行います。
④行動援護
知的障害又は精神障害により行動上著しい困難を有する障害者等に対し、行動に伴う危険を回避するために必要な援護を行うサービスです。外出時の介護も含めた必要な援助を行います。
⑤重度障害者等包括支援
重度の障害があって多くの種類の支援が必要な障害者等に対し、必要なサービスを包括的に切れ目なく提供するためのサービスです。居宅介護、重度訪問介護、同行援護、行動援護、生活介護、短期入所、自立訓練、就労移行支援、就労継続支援、就労定着支援、自立生活援助等のサービスが活用されます。
⑥短期入所(ショートステイ)
介護者が不在となる際等に、介護等が必要な障害者を一時的に施設で預かって支援を行うサービスです。介護者の負担軽減目的や、家庭から離れての生活に慣れるためのステップとして利用されることもあります。
⑦療養介護
医療的ケアを必要とする障害者等に対し、医療機関に入院した上での食事や排せつの介助等を提供するサービスです。長期入院及び常時介護を必要とされる方が対象となり、医療行為を提供することもあります。
⑧生活介護
支援施設へ通所することで、日常生活上の支援を受けるサービスです。介助が必要な障害者の日中活動の場として、様々なレクリエーションや生産活動の支援が行われています。高齢者でいうデイサービスのようなイメージですね。
⑨施設入所支援
施設に入所する障害者に対し、主として夜間において、入浴、排せつ及び食事等の介護、生活等に関する相談及び助言その他の必要な日常生活上の支援を行います。日中は生活介護事業所等で日中活動に参加することが利用の前提となっています。
次に、訓練等給付です。こちらは、日常生活や社会生活を営むために必要な訓練を提供するサービスです。身体的な介護が行われるものではなく、リハビリや就労に関わるサービスが中心となっています。
①自立生活援助
障害者支援施設などを利用後に一人暮らしをする障害者に対し、定期的に自宅を訪問して、生活上の困りごとについて相談に乗る他、必要な助言等を行うサービスです。長期入院後の地域移行の場面等で活用されるサービスです。
②共同生活援助(グループホーム)
民家やアパート等で営む障害者の共同生活を支援するサービスです。生活上の相談、入浴、排せつ又は食事の介護その他の必要な援助を行います。
③自立訓練(機能訓練)
身体障害者等の身体機能の維持・回復のためのリハビリテーション訓練を提供するサービスです。専門職(作業療法士等)によるリハビリテーションを主に行います。
④自立訓練(生活訓練)
自立した日常生活を営むために必要な訓練、生活等に関する相談及び助言その他の必要な支援を行います。泊まり込みで家事等の生活スキルを身につける「宿泊型自立訓練」という形態もあります。
⑤就労移行支援
一般企業への就労を希望する障害者に対し、就労に必要な知識やスキルの向上のために必要な訓練及び求職活動に関する支援を行うサービスです。
⑥就労継続支援A型(雇用型)
一般企業に雇用されることが困難な障害者に対し、就労や生産活動の機会を提供するサービスです。このうちA型事業所は、利用者と事業所とで雇用契約を結ぶことが特徴です。そのため、労働基準法や最低賃金が適用されます。
⑦就労継続支援B型(非雇用型)
一般企業に雇用されることが困難な障害者に対し、就労や生産活動の機会を提供するサービスです。このうちB型事業所は、利用者と事業所とが雇用契約を結ぶことはなく、利用者の活動に対する報酬として工賃が支払われます。A型事業所と比べると、居場所としての役割が大きいと言えるでしょう。
⑧就労定着支援
就労移行支援や就労継続支援(A型・B型)等を利用後に就職した障害者に対し、職場定着のサポートを行うサービスです。仕事上の問題等について相談に乗ったり、企業と連携して職場環境を整えたりします。
こうして俯瞰すると、日常生活の支援~就労支援まで、様々なサービスがあることが分かります。自分自身の状況や希望に応じて、これらのサービスを活用してくださいね。
最後に、障害福祉サービスについてのよくある質問をQ&A形式でお答えして、コラムの締めにしたいと思います。
障害福祉サービスにまつわるQ&A
Q:手帳を持っていないとサービスを利用できないの?
A:必ずしもそうではありません。お住まいの自治体に相談を
「障害者総合支援法」が定める「障害者」とは、「様々な障害が原因で、日常生活に相当の困難が生じている」者、という意味です。したがって、手帳を持っていることがサービス利用の必須要件ではありません。つまり、「手帳がないからサービスを利用できない」ということはないのです。ただし、「サービスを利用する必要性が認められる」必要がありますので、手帳に代わる証明(医師の診断書等)の提出を求められることがあります。自治体により判断が異なりますので、詳しくはお近くの障害福祉課に確認するようにしてください。
尚、手帳については、こうしたサービスや配慮を受けやすくなる以外にも、税制上の優遇や各種割引制度の適用等のメリットを受けられる場合があります。また、障害者枠での就職を希望する場合、手帳の提示が求められます。サービス利用と併せて取得を検討するもの良いでしょう。
Q:サービスを利用するのにお金はどのくらいかかるの?
A:本人及びその家族の収入による応能負担です
18歳以上の障害者の場合、「本人とその配偶者」の収入、18歳未満の障害児の場合、「保護者」の収入によって月々の自己負担額が決定します。障害福祉サービスの自己負担は、所得に応じて4区分の負担上限月額が設定されており、利用したサービス量にかかわらず、それ以上の負担は生じません。
以下に厚生労働省のHPのリンクを貼っておきますので、詳細はこちらからご確認いただけたらと思いますが、月々0円~37,200円の負担が発生する可能性があります。
参考:厚生労働省ホームページ(https://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/service/hutan1.html)
Q:どうやって福祉サービス事業所を探せばいいの?
A:ネット検索のほか、地域の相談支援事業を活用するのが良いでしょう
障害福祉サービスには多くの種類があり、またサービスを提供する事業所も複数あります。自分の希望に合ったサービスを探すのは大変です。どのように探せば良いかいくつか方法をご提案します。
①インターネットで検索してみる
住所や事業所名から自分に合ったサービスを検索することができます。
参考:WAMNET(https://www.wam.go.jp/sfkohyoout/COP000100E0000.do)
WAMNETには全国各地、すべての事業所の情報が掲載されています。
これ以外にも、事業所と利用者をマッチングするような民間の情報サイトも多数存在していますので、活用すると良いでしょう。
②相談支援事業所を活用する
ネットの検索だけだと実態が分かりにくい、自分に合う事業所をプロに紹介してもらいたい、まずは話をきいてほしい。
そんな方におすすめなのが、相談支援事業所の活用です。相談支援事業所は、障害についての困りごとや障害福祉サービスについて相談に応じる事業所です。地域の福祉の実情や障害者支援について専門的な知識をもった相談員が相談に乗ってくれ、相談者のニーズに合った事業所を一緒に探してくれます。相談支援事業所は、役所の障害福祉課が紹介してくれますので、まずはお近くの役所まで相談に行ってみるのが良いと思います。
今回は以上です。少しでも皆様のお役に立てれば幸いです。
ありがとうございました!