障害をもつ高校生の皆さん、進路に悩んでいませんか?
障害を持つ高校・特別支援学校の生徒の皆さんや、その保護者の皆さんの中には、「学校を卒業した後、どんな進路を選べばよいんだろう?」と悩んでおられる方が多いのではないでしょうか?
たとえばこんな感じで…
「学校を卒業した後はどうすればいいんだろう?」
「やっぱり大学等への進学は難しいかな?」
「じゃあ就職?」
「でもまだ就職するのは不安だなあ」
「そうなると福祉事業所に通うことになるのかな?」
「とはいえ、どこを選ぶのが良いのか全然わからないよ」
「やりたいことなんて分からないから選べないよ」
このコラムでは、障害を持つ高校・特別支援学校の生徒の皆さん(以下「障害をもつ高校生」)の進路の現状と進路の選択肢について解説していきます!
障害をもつ高校生の学校卒業後の進路の現状
障害をもつ高校生は、どのような進路を選んでいるのでしょうか?それを見る前に、高校卒業後の一般的な進路の状況について見てみましょう。
文部科学省の「学校基本調査」によると、2021年(令和3年)の大学進学率(短大を含む)は約57%、専門学校への進学率は約17%となっています。両者を合わせると、約75%の人が進学を選んでいるということが分かります。進学せずに就職する人は約16%です。進学を選ぶ人の割合は年々増えており、今後もその傾向は続くと考えられます。
さて、では障害をもつ高校生の場合※はどうでしょうか?同じく「学校基本調査」によると、障害をもつ高校生の約60%が社会福祉事業所への入所・通所を進路として選択しています。次いで多いのが就職で、割合は約30%です。進学を選ぶ人は全体の約2%に過ぎません。一般的な進路の状況と、障害をもつ高校生の進路の状況が大きく異なっていることが分かります。
※特別支援学校高等部を卒業した人を対象とした調査結果です。
もっとも、福祉事業所と一括りに言っても様々な種類があり、それぞれの個性や事情、ニーズに応じて利用する事業所を選ぶことができます。また、極めて低水準となっている進学率を背景に、障害をもつ高校生の進学の選択肢を増やそうという取り組みも始まっています。
ここまで、現状を確認したうえで、もう少し具体的にそれぞれの進路先について見てみましょう。
障害をもつ高校生の具体的な進路先
障害をもつ高校生の進路として、具体的には以下のようなものがあります。
①大学や専門学校等に進学する
②企業に就職する
③就職のための訓練を受ける
④支援を受けながら就労の体験をする
⑤必要な支援(介助)を受けながら日中活動に取り組む
一つずつ見ていきましょう!
①大学や専門学校等に進学する
一般の高校生同様、大学や専門学校等へ進学します。自分の興味のある分野について深く学ぶことができたり、専門的な技能を身につけたりすることができます。
良い点:自分の興味に沿った勉強ができる/就職に有利/勉強に限らず様々な経験ができる
注意点:高校卒業程度の学力が必要/履修や就職活動は自己管理が原則→孤立しやすい
②企業に就職する
高卒で就職するのも選択肢の一つです。仕事をする心構えや能力が求められますが、金銭面を含めた早期の自立が目指せます。就職には、障害者枠での就職と一般枠での就職があります。
良い点:金銭的自立ができる/社会への貢献感を得られる
注意点:心構えや能力が求められる/職場でのトラブル等は自己対処が原則
③就職のための訓練を受ける
高校卒業後すぐに就職するのではなく、就職のために必要なスキルを身につけるための訓練を受けるという選択肢もあります。
主なものに職業訓練校、就労移行支援事業所があります。
●職業訓練校
公が設置する障害者のための職業訓練施設です。仕事に必要な知識や技術を学ぶことで就職を目指します。
良い点:仕事に直結するスキルを身につけることができる/訓練手当等をもらいながら通うことができる※
注意点:利用期間は半年〜1年間/数が少ないため、自宅近くに訓練校がない可能性がある
※受給には条件があります
●就労移行支援事業所
障害福祉サービスの一つです。就職に必要なスキルのトレーニング、就職活動への同行等の支援を行います。
良い点:就職に向けた手厚いサポートが受けられる/無料で利用できる※
注意点:本人に就職の意思があることが前提/利用期間は原則2年間
※本人の所得によっては一部自己負担が発生することがあります
④支援を受けながら仕事の体験をする
福祉事業所で支援を受けながら仕事(生産活動)に従事することができます。こうした事業所を就労継続支援事業所といい、事業所と雇用契約を結ぶかどうかによってA型とB型に分かれます。以前は単純作業が中心だったA型・B型事業所ですが、最近はIT関係の仕事やカフェの接客など、ユニークな取り組みを提供する事業所も増えています。
●就労継続支援A型事業所
事業所と雇用契約を結ぶことが特徴です。それにより、最低賃金以上の報酬が得られますが、その分の仕事の力を求められます。
良い点:支援を受けながら仕事ができる/最低賃金以上の報酬が得られる
注意点:最低賃金以上の仕事の力を求められる/一般就労へのインセンティブが起きにくい
●就労継続支援B型事業所
生産活動に従事し、工賃を得ます。仕事の場であると同時に、日中の居場所的な役割も果たします。
良い点:雇用契約を結ばないため、比較的自由な働き方ができる/利用期間に制限がない
注意点:工賃の相場は月1万円〜3万円程度
⑤必要な支援(介助)を受けながら日中活動に取り組む
常時支援及び介助が必要な障害者の日中活動の場として挙げられるのが生活介護事業所です。入浴や排泄、食事などの介助の他、創作活動やレクリエーションを行います。
良い点:必要な介助を受けられる/日中時間の充実が図れる
注意点:障害支援区分3以上で利用可能/工賃等は発生しない
「もっと学びたい」ーそんな希望にこたえる選択肢を
障害をもつ高校生の進路には、以上のような選択肢があり、それぞれのニーズに応じて実際の進路を選んでいくことになります。
いずれにしても、働く、あるいは働くための訓練をする、という選択が中心で、「もっと学びたい」というニーズに応える選択肢が十分でないというのが現状です。
こうしたニーズに応える取り組みとして、障害者の「学びの場」事業が各地で始まっています。「学びの場」事業とは、障害福祉サービスの枠組みを利用して、就労支援に留まらない青年期らしい豊かな学びを提供しようという試みです。
「学び場パレット」は、障害福祉サービスのうち、自立訓練事業(2年間)+就労移行支援事業(2年間)を活用した合わせて4年間の学びの場事業を行う福祉事業所です。
「もっと学びたい」「青春がしたい」「ゆっくり自分探しがしたい」「兄弟と同じような学生生活を送りたい」
そんな思いをお持ちの方、パレットのような場所もあるということを知っていただき、進路の一つの選択肢としてご検討いただければと思います。
今回は障害をもつ高校生の進路の選択肢について解説しました。進路に悩む障害を持つ高校生や、その保護者の皆さまの参考になればうれしく思います。
ありがとうございました。